大切なことを、ちゃんと伝えられていますか?
父(奥田瑛二)は高校の先生で熱血サッカーコーチ、子どもの史郎(AKIRA)はその教え子でサッカー部のキャプテン。父でもあり教師でもあるという複雑な関係が時に家族の関係を微妙にしてしまうのかもしれないですね。そんな関係が、父がガンで倒れた時から微妙に変化し始める。
作品は錯時法を使って時間軸を行ったり来たりしながら、人物の心情を少しずつ明らかにしつつ進んで行きます。物語の時間軸と語られる順序が一致しないため、余計に心に染みるものがあります。当然同じ場面が何度か出て来るのですが、物語中の未来を知っているか否かで場面の持つ意味が大きく変わって来ますよね。物語の順序を再組み立てするのも意識することなく見ることが出来ると思います。
【以下ネタバレ注意】非常に印象的だったのは、史郎が自分もガンであることを知ってから、父の回復を祈る一方で、父に早く死んで欲しいと思うようになったことを独白すること。親よりも先に死ぬことの親不孝さを、こういう表現でしか表せないあたりに「ちゃんと伝える」と言うタイトルが響いて来ます。また、最後に父が「ちゃんと伝えなきゃな」と言って倒れるシーンも非常に印象的です。やはりお互いにわかり合いたい/わかり合えていないと言う気持ちがあったのかと思われます。
映画のクライマックスは史郎が父との最後の約束を果たすシーンでしょうか。そこに家族や友人が迎えに来たシーンで泣きました。あり得ないかもしれないけど、自分が父や母に何がしてあげられるだろう、そう考えると涙が止まりませんでした。映画の最後で史郎に寄り添う恋人の陽子(伊藤歩)に自身のガンを打ち明けるシーンもジーンと来ます。まぁ、父より酷いと宣告された史郎のガンはどうなったのか・・・はこの映画では触れてはいけないんでしょうね。
優しくて少しバカな、ともかく泣ける良い映画だと思います。
自分の家族、両親や妻に「ちゃんと」伝えられているのか胸が痛いです。
シネマトゥデイより
ストーリー:毎日1時間だけ父親が入院している病院へ通う史郎(AKIRA)だったが、ある日、自らの体も病に冒されていたことを知ってしまう。父親より病状は悪く、父親より余命が短い可能性が高いという不測の事態に襲われた史郎は、家族や恋人のことを思うばかりに、そのことを誰にも言えずにうろたえてしまう。【スタッフ】
監督・脚本: 園子温
プロデューサー: 梅村安
エグゼクティブプロデューサー: 丸茂日穂
撮影: 上野彰吾
照明: 鳥越正夫
助監督: 天野修敬
録音: 西條博介
美術: 大庭勇人
編集: 伊藤潤一【キャスト】
AKIRA(EXILE)
伊藤歩
高橋惠子
吹越満
綾田俊樹
諏訪太朗
佐藤二朗
でんでん
高岡蒼甫
奥田瑛二 他